17.07.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア

17.07.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア

ヴェネツィアからマンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパへ。

Viaggio! Italy 

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マンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパ。イタリア経済の中心であり最新モードの発信地ミラノと、中世に栄華をきわめ今でも職人たちが伝統を守る水の都ヴェネツィアとの間に位置し、両地域の影響を受けながらも個性的な魅力を育んできた小都市を、写真家・石川直樹さんと巡るViaggio(旅)に出かけよう!

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イタリアには何年も前に一度だけ足を踏み入れたことがあるが、ローマなどの観光地を巡った程度で、ほとんど記憶に残っていない。以来、再訪の機会を逃してきたので、今回の旅は以前から楽しみにしていた。

そんなイタリア初心者なので、ヴェネツィアの空港に降り立っても、右も左もわからなかった。アジアの雑踏には慣れているが、ヨーロッパには不得手なのである。空港の窓口でホテルまでの足をアレンジしてくれると聞いて、お願いすることにした。スーツにサングラスという出で立ちの007のような男性が現れて「私がご案内します」という。ぼくは言われるがままに、その男の車でヴェネツィア市街へと向かった。

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007の彼は船着き場にぼくを連れていくと「あの船です」と簡潔に言い、姿を消した。ここでもまたぼくは言われるままに海上タクシーという名のボートに乗ることになった。たった一人の乗客を乗せたボートは何もない川岸で止まり、運転手が指さす方向を見るとホテルがあった。ここは本島の隣、ジュデッカ島である。瀟洒なホテルにチェックインをし、小さな部屋の窓を開け放つと、眼下では演奏会が開かれていた。「ああ、ぼくはヴェネツィアにやってきたんだ」、とそのとき思った。

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翌日、一日かけてヴェネツィアを撮影した。細かい水路が張り巡らされた水上都市なので、何度も船に乗る。海上には何艘ものボートが浮かんでいて、バングラデシュのダッカを思い出した。ダッカにもガンジス河が流れこんでおり、川面は蒸気船や手こぎ舟で埋め尽くされていた。ダッカの混沌と比べると、ヴェネツィアの優雅さは際立っている。こちらのボートは安心して乗っていられるからいい。

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存分に街を歩き、カヌー作りの現場や鍛冶場など、職人の手業を間近で見学した。タイミングよく開催されていた現代アートの祭典、ヴェネツィア・ビエンナーレの雰囲気も、少しだけだが味わうことができた。

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石川直樹

Naoki Ishikawa

1977年東京生まれ。
東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。
CORONA』(青土社)により第30回土門拳賞を受賞。主な著書に『いま生きているという冒険』(イーストプレス)、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、「ほぼ日」の連載をまとめた『世界を見に行く』(リトルモア)がある。
東京・青山のカナダ大使館高円宮記念ギャラリーで「POLAR」展開催中(~7月30 日)。また東京・六本木のIMA CONCEPT STOREでは「MAKALU」展開催予定(8月20 日~10月5日)。
http://www.straightree.com/

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