24.07.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア – 第2回

24.07.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア – 第2回

ヴェネツィアからマンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパへ。

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア – 第2回

Viaggio! Italy

マンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパ。イタリア経済の中心であり最新モードの発信地ミラノと、中世に栄華をきわめ今でも職人たちが伝統を守る水の都ヴェネツィアとの間に位置し、両地域の影響を受けながらも個性的な魅力を育んできた小都市を、写真家・石川直樹さんと巡るViaggio(旅)に出かけよう!

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア – 第2回

夜になってから、バッサーノ・デル・グラッパへ向かった。その町でマンフロット社の創業者、リノ・マンフロット氏に会うためである。

バッサーノはヴェネツィアから車で一時間半ほどの距離にあり、人口は約4万人、旧市街は端から端まで歩いて10分ほどの小さな町だ。ガイドブックでもわずかなページしか割かれておらず、こうした機会でもない限り、なかなか訪ねる機会のなさそうな土地である。

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア – 第2回

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朝、約束の時間ぴったりに、リノ・マンフロットの息子、アブラモがホテルに迎えにきてくれた。小さな町なので、どこに行くにもすぐ着く。彼の車に乗ってわずか10分程度でリノの家の門に着いた。門が開くと、のどかな別世界が広がっていた。広大な庭には木々が生い茂り、気持ちのよさそうな木陰をつくっている。

こんなところに暮らしているリノさんとは、どんな人物なんだろう。内心はびくびくしていたのだが、実際にお目にかかった彼自身は、とても気さくで自然体の老紳士だった。アウトドアウェア・メーカーの老舗『パタゴニア』の創業者のイヴォン・シュイナードに出会ったときのことを思い出した。イヴォンもまた会社の経営からは退き、悠々自適な日々を過ごしており、リノ・マンフロットと同じく、無邪気な仙人のように見えた。

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イヴォンは元々優れたクライマーで、必要な道具を手作りしているうちに登山道具会社を作った。リノもまた元々気鋭のカメラマンで、必要な道具を手作りしているうちに三脚メーカーを作り上げてしまった。

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だから、カメラへの愛は尋常じゃない。最初の挨拶時からぼくが持っていた中判カメラのマミヤ7Ⅱに目を輝かせ、「おれも持ってるぜ」と自分のカメラ庫から新品のマミヤ7を持ってきてくれた。飾ってあるだけで、「15年近く使ってないけどね」と、いたずらっぽく笑っていたが、他にもライカやハッセルブラッドをはじめ古い名機が棚に勢揃いしていて、目が釘付けになった。

彼のことを庭で撮影させてもらった際は、ぼくが未だにフィルムで撮影していることについて並々ならぬ反応を示し、「おれのことを何枚も撮らなくていい。貴重なフィルムが無駄になっちゃうよ」と言って、おどけた仕草を見せるのだった。

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>  Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア– 第1回

石川直樹
Naoki Ishikawa

1977年東京生まれ。
東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。
CORONA』(青土社)により第30回土門拳賞を受賞。主な著書に『いま生きているという冒険』(イーストプレス)、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、「ほぼ日」の連載をまとめた『世界を見に行く』(リトルモア)がある。
東京・青山のカナダ大使館高円宮記念ギャラリーで「POLAR」展開催中(~7月30 日)。また東京・六本木のIMA CONCEPT STOREでは「MAKALU」展開催予定(8月20 日~10月5日)。
http://www.straightree.com/

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